この記事では、「生前贈与」について、メリットデメリットとともに税理士が解説します。
生前贈与に関連する事柄についても、ある程度網羅的に解説しますので、ぜひ、生前贈与の全体像を抑えてください。
※記事公開時点の法律に基づきます。
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生前贈与とは?
生前贈与とは?簡単に解説
生前贈与とは、生きているうちに贈与を行うことです。
贈与とは、財産をあげる、もらうという民法に定められている契約行為です。
贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
参考:電子政府の総合窓口e-Gov 民法第549条
生前贈与のメリット
生前贈与のメリットは、相続税対策として使えることの他、生きているうちに、財産をのこしたい人にのこせること等が挙げられます。
相続税対策としての生前贈与については後ほど解説します。
生前贈与のデメリット
生前贈与のデメリットは、契約書の作成など、法的手続きをきちんとしておかないと、相続税対策として失敗したり、家族が揉める原因になることが挙げられます。
また、子どもに財産をわけすぎた結果、生活に困窮したり、親の面倒を見てくれないという酷いケースもあります。
生前贈与にかかる「贈与税」とは
贈与税とは?
贈与税とは、「相続税法」に規定されている税金であり、次の通り定められています。
贈与税は、この節及び次節に定めるところにより、贈与により財産を取得した者に係る贈与税額として計算した金額により、課する。
参考:電子政府の総合窓口e-Gov 相続税法第21条
わかりやすく言えば、贈与税とは、財産をもらった人が支払う必要がある税金です。
より詳しい内容については「贈与税の仕組みと申告が必要なケースを秋田の税理士が解説」の記事をご覧ください。
贈与税の申告手続きはどうする?
一定金額を超える贈与を受けた場合などに贈与税の申告を行う必要があります。
この場合、1年間に受けた贈与額と贈与税を計算した書類(贈与税の申告書)を作成し、翌年の3月15日までに税務署に提出し、税金を支払わなければなりません。
なお、贈与税には、以下の2通りの方法があります。
- 暦年課税制度
- 相続時精算課税制度
暦年課税制度とは、一年間に受け取った財産額(父から、母から、友人からなど、すべての合計)が110万円を超える場合に申告や納税が必要になる制度であり、一般的にはこちらに該当します。
相続時精算課税制度とは、一定の条件を満たした人が税務署に書類を提出することによって受けられる制度です。この場合には、2,500万円までの贈与税の非課税枠がありますが、110万円以下の贈与であっても必ず申告が必要です。
なお、相続時精算課税制度はデメリットも非常に多く、使いどころがむずかしい制度です。留意点などについて「2500万円の非課税生前贈与「相続時精算課税制度」を税理士が解説」の記事で解説していますので、興味がある場合はこちらをご覧ください。
生前贈与にかかる贈与税の税率は何%?
贈与税の税率は、誰から受け取った財産かや年齢によって変わりますが、10%から55%かかります。
なお、相続時精算課税制度の場合には2,500万円の非課税枠を使った後は一律20%かかります。
生前贈与の手法
年間110万円の生前贈与
年間110万円の生前贈与は相続税対策の手法としてよく用いられています。なお、この方法も完璧な方法ではありません。
110万円の生前贈与のメリットデメリットを「贈与税がかからない110万円の生前贈与で相続税対策はアリ?税理士が解説」で解説していますので、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
2,500万円の生前贈与「相続時精算課税制度」
相続時精算課税制度は、不動産や多額の財産を子どもに一度に移転させたい場合に検討余地がある制度です。
メリットもデメリットも大きい非常にむずかしい制度です。詳しくは「2500万円の非課税生前贈与「相続時精算課税制度」を税理士が解説」をご覧ください。
不動産の生前贈与のデメリット
土地や住宅といった不動産の生前贈与をお勧めできるケースは少ないです。
なぜなら、贈与するたびに登記費用や登録免許税、不動産取得税といった税金がかかるからです。
不動産は相続によって子供に移転させた方が有利なケースが多いです。不動産取得税などについては「不動産取得税は相続した時はかからない【注意点あり】」の記事をご覧ください。
生前贈与による相続税の対策
生前贈与を行う際は贈与税と相続税の税率比較が重要
生前贈与を行う相続税対策では、贈与税の税率と相続税の税率を把握する必要があります。
相続で子どもに財産をのこすのか、贈与で子どもに財産をのこすのか、その税率の差を見て生前贈与を行うと良いでしょう。
連年贈与、定期贈与
年間110万円の生前贈与を行う契約を一度に結んだ場合などは、多額の贈与税がかかるリスクがあります。
3年以内なら生前贈与加算
相続が起こる3年前までに行われた生前贈与については、相続税の計算上、無効となります。
したがって相続税対策は早めに行うことが肝心です。
生前贈与で遺留分を侵害しないよう注意
生前贈与についても遺留分を侵害する場合があります。つまり、家族が揉める原因になることがあります。
生前贈与をするなら契約書の作成などが必須
生前贈与を行う場合には、贈与契約書を作成し、かつ、通帳の管理などを子どもなどに全てまかせる必要があります。
書面だけでなく、実際に財産を管理しているのがだれなのか明確にしておかなければ、税務署による調査が行われた際、多額の罰金が課される恐れがあります。
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