節税したいけど、簡単にできる方法はないかな?
物価が上昇し、給料の手取り額がなかなか増えない人も多いのではないでしょうか。
手取り額を増やすための方法のひとつに「節税」がありますが、どのように始めればいいかわからないですよね。
そこで今回は節税のひとつである、住民税を減らす方法として「ふるさと納税」を紹介します。
厳密にはふるさと納税で住民税が安くなるわけではありませんが、スマホひとつですぐに出来る簡単でお得な制度であるため、この記事を参考に活用してみましょう。
サラリーマンが支払う税金の種類
会社に勤務するサラリーマンは、「所得税」と「住民税」を給与から天引きという形で支払っています。
- 所得税
1年間に稼いだ金額(=所得額)に対して発生する税金。
稼いだ額が多いほど税率が上がる超過累進課税が適用される。 - 住民税
前年度の所得額に対して発生する税金。
所得額に対して一律10%の「所得割」と所得に関わらず均等に課せられる「均等割」の合計額を納める。
それぞれの計算方法は以下のようになります。
所得税
所得税の算出方法はこちらです。
①収入ー給与所得控除=給与所得
②給与所得ー所得控除=課税所得
③課税所得×税率-控除額=所得税額
④所得税額-税額控除=基本所得税額
(※復興特別所得税は除く)
このうち「所得控除」と「税額控除」の控除額を増やすことで、サラリーマンが納めるべき所得税が節税できます。
所得控除
所得税は稼げば稼ぐほど税率の上がる「超過累進課税」であることから、課税所得を減らすことで税率も下がります。
課税所得は②の式で求められることから、所得控除を増やすことで課税所得を減らせます。
所得控除には以下のようなものがあります。
- 雑損控除
- 医療費控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 寄付金控除
- 障がい者控除
- 寡婦控除
- ひとり親控除
- 勤労学生控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 基礎控除
税額控除
税額控除は所得税額から差し引かれるもので、一般的に所得控除よりも節税効果が高いです。
ただし税額控除を受ける場合は、確定申告を行う必要があります。
税額控除には主に以下のようなものがあります。
- 配当控除
- 外国税額控除
- 政党等寄付金特別控除
- 認定NPO法人等寄付金特別控除
- 公益社団法人等寄付金特別控除
- 住宅借入金等特別控除
- 住宅耐震改修特別控除
- 住宅特定改修特別税額控除
住民税
個人の住民税には、「所得割」と「均等割」の2つがあり、それらの合計金額を納めています。
均等割
均等割は所得に関わらず均等に課税されるもので、通常5,000円(市町村民税3,500円+道府県民税1,500円)です。
※ただし2014年度から2023年度までの10年間は、東日本大震災を踏まえた地方団体実施の防災費用確保のため、市町村民税と道府県民税はそれぞれ500円ずつ引き上げられています。
そのため均等割の部分の税額を減らすことはできません。
また、均等割の部分は納税義務者全員に課されるものであるため、一定の条件を満たさない限り基本的に住民税をゼロにはできません。
- その年の1月1日時点で、生活保護法による生活扶助を受けている人
- 障碍者、未成年、ひとり親、寡婦(夫)の人で、前年の合計所得が135万円以下
- 前年の碁恵瓊所得が一定の所得以下の人
所得割
所得割は前年の1月1日~12月31日の課税所得に対して一律10%課税されるものです。
所得税は稼げば稼ぐほど税率が高くなる「累進税率」ですが、住民税は稼いでいてもいなくても税率が同じである「単一税率」です。
所得割は具体的に以下の方法で算出されます。
①所得金額ー所得控除=課税所得金額
②課税所得金額×税率ー税額控除=所得割額
所得金額とは、収入が会社の給料のみの会社員の場合は、税引き前の支給額です。
また所得控除や税額控除の種類は、所得税とほぼ同じです。
サラリーマンができる6つの節税対策
数多くある所得控除や税額控除の中で、サラリーマンが節税するのに効果的な6つの控除はこちらです。
- 医療費控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 住宅借入金等控除(住宅ローン控除)
- 小規模企業共済等掛金控除(iDeCoの利用)
- 寄付金控除(ふるさと納税の利用)
それぞれどのような方法であるか、以下の会社員の山田さんを例に具体的な節税額を説明していきます。
- 山田さん:年収700万円(給与所得のみ)、社会保険料控除105万円
- 妻(専業主婦):一般の控除対象配偶者38万円
- 子ども1人(16歳):一般の扶養控除対象親族38万円
現時点での①給与所得520万円、②課税所得291万円、③所得税率10%、所得税額約19万円、④基本所得税額約19万円、翌年の住民税約31万円
医療費控除
医療費控除は、納税者や生計を一にする配偶者その他親族の支払った医療費が、10万円(所得の合計額が200万円までの人は所得合計金額の5%)を超える場合、超えた金額分を医療費控除とすることができます。
医療費控除額={(その年に支払った医療費の総額)ー(保険金などの金額)}ー{10万円(所得の合計額が200万円までの人は所得合計金額の5%)}
ただし医療費控除額のは最高200万円までです。
家族の通院費が20万円(保険金等なし)の場合医療費控除額は10万円であるため、住民税は税率10%より10,000円の節税、所得税は税率10%より10,000円の節税となり、合計で20,000円の節税ができます。
医療費控除は確定申告により利用できます。
生命保険料控除
納税者が生命保険料や介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合に、一定額まで所得控除を受けられます。
保険の契約日により上限額が異なります。
2011年12月31日以前に 締結した保険契約など | 2012年1月1日以降に 締結した保険契約など | |
一般生命保険料 控除限度額 | 所得税:5万円 住民税:3.5万円 | 所得税:4万円 住民税:2.8万円 |
個人年金保険料 控除限度額 | 所得税:5万円 住民税:3.5万円 | 所得税:4万円 住民税:2.8万円 |
介護医療保険料 控除限度額 | – | 所得税:4万円 住民税:2.8万円 |
全体の 所得控除限度額 | 所得税:10万円 住民税:7万円 | 所得税:12万円 住民税:7万円 |
7万円の生命保険料控除を受けると、住民税は税率10%より7,000円の節税、所得税は税率10%より7,000円の節税のため、合計14,000円の節税ができます。
給与所得者は年末調整または確定申告により利用できます。
地震保険料控除
納税者が地震保険料を支払った場合に、一定額まで所得控除を受けられます。
地震保険料と長期損害保険料では控除額が異なります。
所得税 | 住民税 | |
地震保険料 | 最高50,000円 (保険料が50,000円以下の場合全額) | 支払保険料×1/2 (最高25,000円) |
ただしひとつの契約で、「地震保険料控除」と「長期損害保険料控除(経過措置)」の両方の控除の対象となる保険料がある契約は、いずれか一方の保険料のみ保険料控除に使用されます。
5万円の地震保険料を支払うと、住民税は税率10%より2,500円の節税、所得税は税率10%とすると5,000円の節税のため、合計7,500円の節税できます。
給与所得者は年末調整または確定申告により利用できます。
住宅借入金等控除(住宅ローン控除)
住宅ローン控除は、個人が新築住宅や中古住宅の購入または増改築等をする際に住宅ローンを組んだ場合に受けられる控除です。
住宅ローン控除は以下の適用条件を満たす必要があります。
- 住宅を取得した日から6か月に居住開始し、各年の年末まで引き続き居住していること
- 合計所得が2,000万円以下(床面積が40㎡以上50㎡以下は1,000万円以下)
- 床面積が50㎡以上(一定の場合は40㎡以上)
- 床面積の1/2以上が居住の用に供されている
- 返済期間が10年以上
新築住宅の場合、借入限度額や控除期間は以下のようになります。
居住年 | 住宅ローン年末残高限度額 | 控除期間 | |
一般住宅 | 2023年 | 3,000万円 | 13年 |
2024年・2025年 | 0円 (2023年までに建築確認を受けた住宅は2,000万円) | 10年 | |
認定住宅 | 2023年 | 5,000万円 | 13年 |
2024年・2025年 | 4,500万円 | 13年 | |
特定エネルギー 消費性能向上住宅 | 2023年 | 4,500万円 | 13年 |
2024年・2025年 | 3,500万円 | 13年 | |
エネルギー消費 | 2023年 | 4,000万円 | 13年 |
2024年・2025年 | 3,000万円 | 13年 |
控除率は一律0.7%です。
新築の一般住宅の購入で2,000万円の住宅ローンを借り入れた場合、住宅ローン控除額は14万円です。
所得税は約19万円であることから、住宅ローン控除額14万円全額が所得税から控除されるため節税となります。
ちなみに住宅ローン控除額が所得税から控除しきれない場合、翌年の住民税から9.75万円を上限に控除されます。
住宅ローン控除は初年度のみ確定申告が必要ですが、2年目以降は年末調整または確定申告により利用できます。
個人型確定拠出年金(iDeCo)を利用する
iDeCoの掛金は、小規模企業共済等掛金控除として全額所得控除を受けることが可能です。
ただし掛金の拠出限度額は条件により異なります。
拠出限度額 (所得控除額) | |
フリーランス・自営業など | 816,000円 |
公務員・会社員(確定給付企業年金に加入) | 144,000円 |
会社員(企業型確定拠出年金のみに加入) | 240,000円 |
会社員(企業年金がない) | 276,000円 |
専業主婦(夫) | 276,000円 |
24万円の掛金を拠出した場合、住民税は税率10%より24,000円の節税、所得税は税率10%より24,000円の節税となり、合計48,000円の節税ができます。どこに投資するか迷ったらiDeCoおすすめ銘柄を確認しましょう。
ふるさと納税を利用する
ふるさと納税とは、都道府県や市区町村へ寄付を行い確定申告を行うことで、寄付金の一部が所得税と住民税から控除される制度です。
自己負担額2,000円を除いた全額(収入や家族構成等に応じて一定の上限あり)が控除の対象となります。
ふるさと納税は、本来は住民票のある都道府県や市町村に納税する住民税の一部を寄付金として前払いで納めているだけです。
そのため住民税が減るなど直接的な節税にはなりませんが、以下のメリットもあります。
- 寄付金の返礼品として、応援した地域の特産品などが貰える
- 寄付金の使い道を指定できる自治体もある
- クレジットカードでの支払いでポイント還元を受けられる
通常住民税を納税する場合、返礼品を貰ったり使い道を指定したりポイント還元を受けたりできませんが、ふるさと納税により寄付をすることでこれらのメリットを受けられます。
全額控除されるふるさと納税額(年間上限)については、収入や家族構成などにより人それぞれ異なるため、上限額の目安は次の項目で紹介します。
会社員の山田さんの場合、寄付金控除額の上限額は約78,000円であり、ワンストップ特例制度を利用した場合、住民税控除額は約77,000円となります。
ふるさと納税の寄付金控除は、確定申告またはワンストップ特例制度により利用できます。
すぐに節税するなら「ふるさと納税」が最強!
ここまでサラリーマンが節税するための様々な方法を見てきましたが、もっともおすすめの方法は「ふるさと納税」です。
- スマートフォン1台ですぐに出来る
- その年の1月~12月の間で、好きな時に寄付ができる
- 条件を満たせば確定申告不要
扶養家族がいる人が受けられる扶養控除や一定の収入以下の配偶者のいる人が受けられる配偶者控除などと異なり、いつでもだれでも利用できるのがふるさと納税です。
翌年に納付予定の住民税を前払いする仕組みのため、自己負担額2,000円はかかるものの、iDeCoなどのように別でお金を準備する必要もなく気軽に始められます。
さらに確定申告の不要な給与所得者などは、ふるさと納税先の自治体数が5団体以下であれば「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が利用できます。
確定申告をする必要のない人で、ふるさと納税先の自治体数が5団体以下の場合に限り、ふるさと納税を行った各自治体に申請書を提出することで確定申告が不要になる制度。
ふるさと納税ワンストップ特例の適用を受ける場合は、所得税からの控除は発生せず、ふるさと納税を行った翌年の6月以降に支払う住民税から全額控除されます。
ふるさと納税の流れ
「ワンストップ特例制度」を利用するか「確定申告」を行うかにより、ふるさと納税の流れが少し変わります。
STEP1~4までは共通です。
ふるさと納税する自治体を選びます。
返礼品の内容で選んだり、寄付金額で選んだりと選び方は自由です。
ただし、全額控除されるふるさと納税額(年間上限)を超えた分は寄付金控除とならないためあらかじめ確認しておきましょう。
納税したい自治体が決まったら、申し込みを行います。
申し込み方法は自治体に直接電話やメール、FAXだけでなく、インターネットでの申し込みが可能です。
さとふるや楽天市場などを利用すれば、スマホ1台でいつでもどこでも申し込みができます。
ふるさと納税を申し込み後、支払いを行います。
支払い方法は「現金」「納付書」「銀行振込」「クレジットカード」などから選択できる自治体が多いです。
寄付金の支払い後、ふるさと納税を申し込んだ自治体から「寄附金受領証明書」や「寄附金税額控除にかかる申告特例申請書」などの書類が届きます。
これらの書類はワンストップ特例制度の申し込みや確定申告に必要であるため、無くさないように大切に保管しておきましょう。
返礼品がある場合は書類と同時、または別で届きます。
ここから、「ワンストップ特例制度」と「確定申告」で手続きの流れが変わります。
「ワンストップ特例制度」を受ける場合
返礼品と同時または別で送られてくる「寄附金税額控除にかかる申告特例申請書」を、寄付した自治体へ郵送します。
マイナンバーカードや身分証明書のコピーなどの書類も必要な場合があるため、書類不足とならないよう注意しましょう。
転居による住所変更や申請書の内容に変更があった場合は、ふるさと納税を行った翌年の1月10日までに「変更届出書」を提出してください。
ふるさと納税ワンストップ特例制度を利用した場合、所得税からの控除は行われず、寄付金控除額の全額が住民税から控除されます。
寄付金控除が行われているかは、現在お住いの自治体から、ふるさと納税を行った翌年の6月以降に届く「住民税の控除通知」により確認できます。
「確定申告」を行う場合
納付した自治体が5団体以上など、確定申告が必要な場合は必ず確定申告を行いましょう。
確定申告を忘れると、寄附金控除を受けることができません。
確定申告には勤務先の「源泉徴収票」やふるさと納税を行った全自治体の「寄附金受領証明書」などの書類が必要になります。
確定申告期間は、ふるさと納税を行った翌年の3月15日までです。
確定申告を行うと、所得税と住民税の控除額がそれぞれ決まります。
所得税分はその年の所得税から控除(還付)され、住民税分は翌年度の住民税から控除(住民税の減額)されます。
ふるさと納税の上限額はどれくらい?
給与収入のみ(他の控除を受けておらず、社会保険料控除額は給与収入の15%と仮定)の納税者について、全額控除されるふるさと納税額(年間上限額)を紹介します。
あくまでも参考値のため、他の控除を受けている場合や市区町村などにより控除上限額は異なります。
ふるさと納税を行う本人の給与収入 | 独身または共働き | 夫婦 (配偶者控除を受ける場合) | 共働き+子1人 (高校生) | 共働き+子2人 (高校生と大学生) |
300万円 | 28,000円 | 19,000円 | 19,000円 | 7,000円 |
400万円 | 42,000円 | 33,000円 | 33,000円 | 21,000円 |
600万円 | 77,000円 | 69,000円 | 69,000円 | 57,000円 |
800万円 | 129,000円 | 120,000円 | 120,000円 | 107,000円 |
1,000万円 | 180,000円 | 171,000円 | 166,000円 | 153,000円 |
まとめ
住民税を安くするためには、住民税の所得割の「所得控除」「税率」「税額控除」の部分で節税を行う必要があります。
所得控除を増やす方法や税率を減らす方法は、控除を利用できる人に条件があったり税率の低い自治体へ引っ越す手間があったりと簡単でないものも多いです。
一方で税額控除のひとつである「ふるさと納税」はだれでも簡単に利用できることから、住民税を安くするための方法として最もおすすめです。
この記事を参考に、自分に合った方法で住民税を節税しましょう。