正しく相続税の申告を行ったつもりでも、実は、税金を払いすぎているかもしれません。
そのような場合、相続税の還付手続きを行うことで、払い戻しを受けられる可能性があります。
この記事では、払いすぎた相続税が返ってくるケースや、これら一連の手続きの流れについて解説していきます。
特に、遺産に土地が含まれていたり、相続に不慣れな税理士に依頼していた場合は、税金の過払いを疑ってみたほうが良いでしょう。
以下で、払いすぎた税金が戻ってくる可能性が高い具体的な事例をご紹介しますので、もし該当する場合は、相続税に強い秋田税理士事務所にぜひご依頼ください。
\初回無料診断/
相続税の還付とは?
「還付」とは納めた税金の払い戻しを受けることであり、適切な税金以上に支払った相続税が戻ってくるのが「相続税の還付」です。
相続税を必要以上に納めていた場合には、期限内に手続きをすれば払いすぎた分を取り戻すことができます。
つまり、何らかの理由で相続税を払いすぎた人でも「一度払った税金は取り戻せない」と諦める必要はありません。還付金を受け取れる可能性がある場合、少しでも早く手続きを行うことをお勧めします。
なお、相続税の仕組みや還付を受けられるケースは一般の方にはわかりにくいですが、相続税の過払いが起きやすいケースについて、ポイントを絞って解説していきます。
相続税の還付を受けられる具体的なケース
相続税を払いすぎていて還付を受けられるケースにはさまざまな例があり、場合によっては還付金の金額が数百万円や数千万円にのぼることもあります。
なお、「相続税の申告は税理士にお願いしたから間違いがあるはずがない」と決め付けないことが大切です。なぜなら、相続税の申告は非常に複雑であり、専門性が高い手続きだからです。また、税理士に情報を伝えきれていなかった場合、税理士とのコミュニケーションがうまくいっていなかった場合にも、相続税の過払いが起きることがあります。
以下で、相続税の過払いが起きやすい具体的なケースをご紹介しますので、ご自身が該当するケースがないか確認してみましょう。
<ケース①>評価が難しい土地が遺産に含まれる場合
相続税を計算するとき、特にややこしくて間違えやすいのが土地の評価です。
現金のように、「〇円」と金額をすぐに把握できる資産とは異なり、さまざまな点を考慮して土地の財産額を算定しなければなりません。
なお、土地の評価は相続税に慣れた税理士でも難しく、土地の個別性・不動産関連の法律・権利関係の3つのポイントを考慮する必要があります。
土地の個別性
たとえば次のような土地では、利便性や利用価値が低いため土地の評価額が低くなります。
|
土地の評価減、つまり相続税の減額につながる要素は非常に多く、1つも見落とさずに計算することは困難です。したがって、税理士に情報を伝えきれていなかった場合はもちろん、相続税にあまり慣れていない税理士に依頼した場合には、これらの評価減の見落としが生じることもあります。
医師のセカンドオピニオン同様に、評価減につながる要素の考慮が漏れていないか、別の税理士に意見を求めるケースもあります。
なお、宅地の中でも以下に該当するケースでは、通常の土地と比べて利用価値が著しく低いと考えられるため、土地の評価額を10%減額することができます。
|
たとえば、道路よりも高いまたは低い場所にある宅地は使い勝手が良くないため、土地の評価額が下がり、相続税も安くなります。また、線路の近くの宅地で「騒音」問題があったり、は動物園やゴミ焼却場に隣接する宅地で「臭気」が問題になっているケース、墓地に隣接しているケースなどです。
このような事情は、登記簿など、単に書類を見ただけで把握できるものではありません。相続人の方からお話しを伺ったり、また、実際に土地を見に行かなければ把握できるものでもありません。
つまり、評価の減額につながるこれらの要素を考慮するには、土地だけでなく周囲の状況まで考慮しなければなりません。
税理士によっては、工数削減のため、書類上の土地の面積や形だけ見て、杓子定規な考え方で相続税を計算し、減額を行っていないケースもあります。
なぜなら、相続税を多く納める分には税務署は文句を言ってこないためであり、加えて、そもそも土地の実地調査などをサポート範囲に含めていないケースも少なくないからです。
また、どのような土地が10%の減額の対象なのか明確な基準がないだけに、税理士によって判断が分かれることも少なくありません。
遺産に土地が含まれる場合、評価額を減額できる規定を適用して還付を受けられることもありますので、相続税に詳しい税理士に相談することをお勧めします。
不動産関連の法律
土地の相続税評価額を計算するときには、不動産関連の法律知識も必要です。
たとえば次のような法律の規定が相続税の計算に影響します。
|
土地がある場所や用途によっては上記の法律の規制を受けます。
これらの規制が行われている土地は、使いにくかったり売却しにくいことが多く、相続税の計算で評価額が減額されるケースも少なくありません。
どこの土地がどの法律の規制対象になるかか確認を行わなければ、相続税の計算で減額を行うことはできません。
ただし、これらの法律は税理士の扱う法律ではなく、また、自治体の条例も加味しなければならないことから、これらの規定が漏れてしまっているケースがあります。これらのの考慮が漏れていた場合には還付を受けられる可能性があります。
権利関係
借地権などの権利関係も、土地の相続税評価額の計算に影響する要素の1つです。
たとえば同じ土地でも、自宅を建てている場合と、アパートなど賃貸物件を建てている場合では土地の評価額が変わります。
また、高圧電線の下の土地も、電力会社に一定の権限を認める契約を結んで建築制限を受けているため評価額が下がることがあります。
このような土地を相続した方は、権利関係が適切に考慮されていたかを相続税に詳しい税理士に相談すると良いでしょう。
なお、権利関係に基づく減額率は数十%になることもあるため、ケースによってはかなりの金額の還付金を受け取れる場合があります。
<ケース②>誤って生前贈与加算が適用されていた場合
生前贈与加算とは、故人が亡くなる前3年以内に、子どもや孫、配偶者(奥さん、旦那さん)などに贈与した財産がある場合、その財産の贈与が無かったものとして、相続税の計算上の財産額に足し戻す仕組みです。
相続税は、亡くなった時点に保有していた財産額に応じて課される税金です。従って、生前に贈与を行うことで亡くなった時点の財産額を減らすことによって、相続税の支払いを減らす方法があります。しかし、この方法には落とし穴があり、亡くなる直前に贈与を行い財産を減らしても、その贈与が無かったこととされ、相続税の課税を回避できないような仕組みとされています。
ただし、3年以内に贈与した財産の全てが、生前贈与加算の対象とされるわけではありません。
ごく稀にですが、加算の対象外の財産まで含めてしまって相続税が高く計算されていることがあり、その場合には還付を受けられます。
生前贈与加算の対象になるのはどんな人?
生前贈与加算(死亡前3年以内に贈与を行った財産の相続財産への足し戻し)の対象となるのは、「相続や遺贈(遺言書)によって財産をもらった人」です。
例えば、夫が亡くなり、遺産を相続したのが妻と子ども1人の相続人が2人となるケースで解説します。
夫が亡くなる1年前に妻・子ども・孫に100万円ずつ贈与を行い、相続が起こった際に財産を受け取ったのが妻と子どものみの場合、財産を受け取った妻と子どもに対する贈与の100万円部分は相続財産に足し戻されます。一方で、財産を相続していない孫に生前に贈与した100万円部分は、相続税の計算上の財産とはみなされず、相続税の課税対象とはなりません(つまり、生前贈与加算は行われません)。
しかし「亡くなる前3年以内の贈与はすべて含める」と勘違いして、孫への100万円まで計算に含めてしまっている場合があります。
<ケース③>税理士が相続税の申告に不慣れだった場合
年間の死亡者数約136万人のうち相続税の課税対象になるのは約11万6,000人で、全国にいる税理士の数は約8万人です。
つまり、一人当たり年間1件~2件程であり、そもそも相続税申告を経験したことがない税理士も中にはいます。
また、8万人といっても、医者に外科医、内科医といった専門性があるのと同様に、税理士も、法人税を専門とする方、大企業のみを専門とする方、所得税を専門とする方、或いは、何でもある程度見るといった方もおり、すべての税理士が相続税に詳しいわけではありません。
また、相続税は特に専門性が高く、計算が複雑な不動産が遺産に含まれるケースに、慣れていない方が申告を行った場合には漏れが生じてしまうこともありますので、一度申告を行った場合であっても、相続税に詳しい税理士に申告内容をあらためてチェックしてもらい、還付を受けられないかどうか確認される方もいます。
<ケース④>自身で相続税申告を行った場合
税理士に依頼を行わず、相続税の申告を自身で行った方は、まず間違いなくミスがあると考えて良いでしょう。
相続税の仕組みは非常に複雑であり、申告を自身で行うこと自体が簡単ではありません。しかし、もし自分で申告した場合には、計算ミスはもちろん、税額軽減・非課税制度の適用漏れなどがあると言えるでしょう。
計算ミスがあった場合には罰金を支払う必要があったり、また、税金を納めすぎになっていることがあります。
もちろん、税務署は多く納めてくれる分には文句を言いませんので、仮に相続税を多く支払いすぎていた場合でも、税務署がわざわざ教えてくれることはありません。また、一度申告したあとでは税金を減らす特例を使えないこともありますので、まず、自身で申告するという考えは避けるべきでしょう。
なお、もし自身で申告を行った場合、申告した内容がわかる書類を準備して、相続税に詳しい税理士によるチェックを受けることをお勧めします。
相続税の還付手続きの期限
相続税の還付請求の手続きは、「相続税の申告書の提出期限から5年」以内に行うことが求められます。
なお、相続税の申告書は、「相続の開始を知った日(通常は亡くなった日)の翌日から10か月」が提出期限とされていますので、つまり、相続税の還付請求の手続きは、亡くなってから5年10か月以内に行う必要があります。
相続税が返ってくるまでの手続きの流れ
相続税の還付を受けるには、税務署に対し、「更正の請求」と呼ばれる手続きを行わなければなりません。
更正の請求とは、税金を多く支払っていたため、返して欲しいという手続きです。なお、更正の請求を行う場合、相続税の減額を行う要素を把握し、財産評価のやり直しと、相続税の申告書の作り直しが求められます。
以下では、手続きの流れや要する期間などを紹介しますが、実際に手続きを行う場合、まずは税理士に相談すれば良いでしょう。
<Step①>相続税に詳しい税理士へ相談
相続税に詳しい税理士や、実際に相続の還付手続きを扱ってきた経験がある税理士に相談しましょう。
相続税の申告で間違えやすい点や相続税の減額・還付につながる点を理解している税理士であればスムーズに話が進みます。
相談するにあたって、まずは申告した内容がわかるように相続税の申告書を用意し、財産の状況について把握しておきましょう。
税理士に申告書をチェックしてもらい、相続税を払いすぎていて還付金を受け取れそうな場合は更正の請求を行うことになります。
<Step②>更正の請求書等の提出
還付を受けるには、税務署に「更正の請求書」を提出する必要があります。
更正の請求書は、請求をするに至った事情を記入するとともに還付金を振り込んでもらう口座などを記入する書類です。
また、税額の計算がどうして変わったのか、税務署に説明を行わなければなりませんので、「更正の請求の理由の基礎となる事実を証明する書類等」の提出が求められます。
なお、更正の請求の手続きを行うのは、ご自身が住んでいる地域の税務署ではなく「相続税の申告書を提出した税務署」です。
<Step③>税務署による審査
更正の請求書等を提出すると、書類をもとに税務署で審査が行われます。
審査にかかる期間はケースによって異なりますが2~3ヶ月程度です。
問題なくスムーズに審査が通るケースがある一方で、書類チェックだけでなく税務署から個別に確認が入るケースもあります。
<Step④>更正通知書の送達
審査が終わって更正の請求が認められれば「更正通知書」という書類が届きます。
逆に更正の請求が税務署に認められなかったときは、「更正すべき理由がない旨の通知」が送られてきます。残念ながら、相続税の還付は必ずしも認められるわけでは無く、きちんと減額の要素を満たしているか検討を行う必要があるからです。
<Step⑤>指定口座への還付金の振込
更正の請求が認められて「更正通知書」が届いた後、後日、指定口座に過払い分の税金が振り込まれます。
請求の手続きをしてから実際に還付金が振り込まれるまでにかかる期間は、ケースにもよりますが3~6ヶ月程度です。
相続税還付のまとめ
相続税は計算方法が非常に複雑で、誤って払いすぎている可能性もある税金です。税理士とのコミュニケーション不足により、相続税の減額につながる要素を伝えきれておらず、申告時に適切に考慮できていないケースは思いのほか多くあります。
還付金の金額が数百万円、数千万円になることもありますので、還付の可能性について、セカンドオピニオンとして相続税に詳しい税理士に相談しておいて損はありません。
なお、特に遺産に土地が含まれるケースや生前に贈与が行われていたようなケースでは注意が必要です。
既に相続税の申告を終えた方でも、気になるようであれば、今一度相続税に詳しい税理士にセカンドオピニオンとして相談し、申告書をチェックしてもらうと良いでしょう。
申告済の相続税について思い返す機会は多くないと思いますが、お金が返ってくるのであれば、しっかりと受け取りましょう。
\初回無料診断/