65歳を目安に、一度専門家に遺言書作成を依頼することをおすすめします。
この記事では「相続実務のツボとコツがゼッタイにわかる本(出版社:秀和システム株式会社)」の著者である、秋田市の税理士 坂根崇真が解説します。
ポイント
- 子供の争いを避けるためには遺言書を書くべき
- 認知症になってから書く遺言書は無効になる
- 専門家に依頼せずに書く遺言書は無効になることも多い
秋田税理士事務所グループでは、税理士や司法書士などの専門家が公正証書遺言の作成を11万円(税込)でサポートします!お気軽にご依頼ください。
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65歳から遺言書を書くべき3つの理由
遺言書の作成は65歳には一度書くことをお勧めします。
相続で対策なのは「税金対策」ではなく、いかに「争いを防ぐ」かだと私は考えていますが、遺言書があることで避けられる争いもやはりあります。
ポイントは大きく3つあります。
ポイント
- 老後の資金計画のため
- 相続時の争いを避けるため
- 認知症になったら遺言書を書けないため
老後の資金計画のため
60歳や65歳で定年退職を迎えて退職金が入れば、老後の資産状況についてある程度の見通しが立ちます。
今後入ってくるお金や老後必要になるお金を具体的にイメージしやすくなるこのタイミングは、老後の資金計画を立てる良いタイミングです。
このタイミングで財産の棚卸をして今ある財産を把握しておくと、その後の資金計画を立てやすくなります。そして、この際、老後の資金計画とともに考えておきたいのが相続です。
人生100年時代と言われることも多くなってきましたが、定年退職したこのタイミングで遺言書を書いたり相続の対策を始めることによって、取れる選択肢の幅が広がります。
また、遺言書は常に新しいものが有効とされるため、何度でも書き直すことができます。
何も書かないよりは、いざという時のために書いておいた方が良いです。5年、10年毎に資産の棚卸とセットで遺言書の見直しをすれば良い話ですので、65歳には人生の節目として一度遺言書を書いておきましょう。
相続時の争いを避けるため
揉めてしまった相続は、亡くなった方が遺言書を書いていれば防げたケースがほとんどです。
遺言書がない場合は、全ての相続人が話し合いで遺産の分け方を決めることとなりますが、これが相続で揉める大きな原因です。
もしも遺言書があれば、基本的にはその遺言書の通りに遺産を分割することになるため、相続人の間で分け方を理由に揉めることはありません。
もちろん相続人全員の同意があれば、話し合いで遺言書とは違う遺産の分割方法を決めることができますが、1人でも遺言書の通りにしたいという相続人がいれば、遺言書の内容が優先されます。
遺言書を残すことによって、遺族間での分割協議がまとまらない場合の一つの解決策とすることができます。
認知症になったら遺言書を作成できない
遺言書は認知症になったら作成することができません。
亡くなる直前に遺言書を書くというイメージをお持ちの方もいますが、実際は、亡くなる直前に遺言書を書くことは難しいケースがほとんどです。
「遺言書なんていつでも書けるし、まだ必要ない」と後回しにしていると、いざ認知症となった時には手遅れで書けなくなってしまいます。
また、認知症と診断されると、遺言書を書けたとしても判断能力はないものとされ、法律上その遺言書は無効となります。
遺言書は何度でも書き直すことができますし、どれだけ若い年齢のうちに書いたとしても早すぎるということはありません。
運転免許証の裏にだって、交通事故などで亡くなったときに臓器提供をどうするか書きますよね。
現実に、70代では約10人に1人が認知症を発症していることを考えても、やはり定年退職のタイミングである60歳、65歳で遺言書の作成をするのは、早すぎることはないでしょう。
遺言書は何歳から書ける?
遺言書は15歳以上から書くことができます。
民法第961条では、「十五歳に達した者は、遺言をすることができる。」と定められています。
そのため、成人していなくても遺言書をのこすことは可能です。もちろん、15歳で遺言書を書く人は今の日本では中々いませんが、決して歳をとったから書くものというわけではありません。
遺言書作成で財産の棚卸し
遺言書作成は財産を洗い出すことから
遺言書を作成するには、全ての財産状況を把握しなければなりません。
具体的には以下のような財産・債務を全て洗い出します。
ポイント
- 土地
- 建物
- 有価証券(株・投資信託・社債、等)
- 現預金
- 保険関係
- その他の財産(車・貴金属・貸付金、等)
- 債務
これらすべての財産・債務がどれだけあるかを把握することから遺言書の作成がスタートします。
遺言書に載らなかった財産・債務については相続人の間で協議(話し合い)が必要になるため、なるべく漏れのないように財産・債務を記載しなければなりません。
せっかく遺言書を書いても、財産内容に不備があると結局相続人同士で揉める原因となってしまいます。
不備なく揉めない相続を実現するために、専門家とともに、財産・債務の棚卸しをして、しっかりと漏れなく把握することからはじめましょう。
老後のライフプランが立てやすくなる
財産の棚卸をすることによって、老後のライフプランをより具体的に立てることができるようになります。
特に、定年退職をしたタイミングであれば、退職金や今後受け取る年金等も明確になり計算しやすくなります。
人生100年時代ともいわれる現代においては、定年退職後も長い人では30年以上セカンドライフを歩みます。
定年退職を機に財産の棚卸をして遺言書を書くことによって、セカンドライフの不安を取り除いたり、備えをしたり、相続対策だけではなく老後の生活の対策も同時に取ることができます。
遺言書作成は早ければ早いほど良い
遺言書の作成は定年退職が一つの良いタイミングになることは間違いありませんが、早いに越したことはありません。
なぜなら、事故や自然災害で亡くなる可能性は誰にでも等しくあるからです。
いつか書こうと思っていても、万が一は突然やってくるかもしれません。
家族ができたり、会社を経営していればなおさら遺言書の作成はしておいた方が良いです。
遺言書は1度書いたら終わりではなく、その時々の財産状況などに応じて書き直すことができます。
たとえば誕生日ごとに遺言書の内容を見直し、必要に応じてその都度書き直すというのも良いでしょう。
いつかは遺言書を書こうと思っていても、突然何らかの事情によって手遅れになってしまう可能性もあります。
とはいえなかなか遺言書を書くタイミングは日常生活の中では見つけにくいので、定年退職を機に一度書いておくことが望ましいでしょう。
遺言書が無いと遺産分割は難しい
相続が起こった際、遺言書が無いと遺産分割はむずかしく、争いが起きることは頻繁にあります。
ポイント
- 不動産は分けにくい
- 「当たり前」は人それぞれ
- 遺産が少ない方が揉める可能性が高い
不動産は分けにくい
相続財産の中に不動産があると、揉める可能性はグンと高まります。
理由は単純で、不動産は分けにくいからです。
自宅を物理的に2等分にすることはできませんし、お金でわけるとしても、どの価格を基準とするかによっても意見は分かれます。
不動産の価格には次のようにいくつもの評価方法があり、同じ不動産でも評価方法によって評価額は大きく異なります。
- 売却査定額
- 相続税評価額
- 固定資産税評価額
その不動産が欲しい相続人はなるべく評価額が低くなるような評価方法を基準にしたいと考え、不動産以外の財産が欲しい人はなるべく不動産の評価額が高くなる評価方法を基準にして、不動産以外の財産を多く取得したいと考えがちです。
また、財産の多くの割合が自宅不動産で、故人と同居している相続人がいる場合の遺産分割なども揉めやすくなる傾向があります。
不動産を売却して現金で分けることもできますが、故人の住んでいた実家を売却するかしないかも相続人によって意見が分かれることがあったり、不動産がある相続の遺産分割は非常に難しくなります。
しかし、遺言書があれば揉める余地がなくなり、スムーズに分割できるケースも多くなります。そのため、生前に遺言書を書いておくことが重要です。
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「当たり前」は人それぞれ
相続人によって「当たり前」と考えていることは異なります。
たとえば、故人と同居していた長男は「親の面倒をずっとみてきた。介護も大変だったんだから、自分が多くもらうのは当たり前」と考えていたとします。
ところが、遠方で離れて暮らしていた弟は、次のように考えていたとします。
- 「兄貴はこれまでずっと家賃も払わずに実家で生活をしてきたんだから、その分兄貴の取り分は少なくして当たり前」
- 「兄貴はお父さんのお金で大学に行かせてもらったのに、俺は次男だから大学に行かせてもらえなかった、不公平だ」
- 「兄貴は結婚するとき、子供を育てるときにお父さんからお金を援助してもらっているけど、俺は結婚しなかったから何ももらっていない」
どちらの言い分も、当事者になれば十分納得できるだけの理由があります。このように、「当たり前」の価値観の違いによって争いが起きる可能性があります。
こんなケースにも、たとえば次の遺言書があればどうでしょうか。
遺産のうち、自宅と預金500万円は長男へ、それ以外の一切の財産については弟へ。
追伸:
遺産の配分についてですが、どのような形が良いのか本当に悩みました。そして、2人がケンカしないように、専門家の先生と相談して上記のように決めました。
財産については、自宅はいま長男夫婦が住んでいるから長男へ。また、自宅分についても相続税がかかるから、その分、納税資金として500万円は長男にのこします。
長男には介護もしてくれて本当に申し訳ないけど、弟には大学に行かせてやる学費を用意できなかったし、生活もすこし苦しいようなので、残りの財産は弟に残してあげたいと考えています。
兄へ・・・介護も大変だったと思うし、苦労をかけたね。母ちゃんも早くに亡くなって迷惑ばかりかけたけど、本当に立派に育ってくれて心置きなく天国へと旅立てます。弟と、兄弟2人一緒に仲良くしてください。
弟へ・・・今まで苦労をかけてごめんね。本当は大学に行かせてあげたかったけど、俺が稼げなかったから大学に行かせてやれなくて。年金で生活費は賄えたので退職金などほぼ手つかずなので、これはあなたに残したいと考えています。お兄ちゃんと2人一緒に仲良くしてください。
もちろん、現実にはこんな単純な話ではありませんが、しっかりと遺言書をのこして感謝の言葉を生前に伝えていれば相続人同士の争いを防ぐことができる可能性はぐんと上がります。
遺産が少ない方が揉める可能性が高い
相続手続き等のご依頼をされる方の中には、1億円2億円の財産があっても「うちにはそんなに財産はないから」と仰る方も少なくありません。
財産の多い少ないはあくまでそれぞれの主観ですが、「財産が少ない」と考えている方は揉めやすい傾向にあります。
また、相続財産のほとんどが自宅不動産のみで同居していた相続人と同居していなかった相続人がいる場合も揉める可能性は大きくなります。
自宅不動産以外に金融資産(現金や預金など)もあれば調整しやすいですが、遺産のほとんどが自宅不動産でそこに住んでいる相続人がいるとなると、遺産分割はなかなかスムーズにはいかなくなります。
現に司法統計を見てみると、争いの約75%が遺産総額5,000万円以下となっています。
遺産総額が5,000万円以下の場合は相続税がかからないことが多いですが、たとえ相続税はゼロだったとしても、遺産分割がまとまらず揉めてしまうケースは非常に多いです。
ポイント
財産が少ない場合、少ない財産をできる限り多くもらいたいと考える人が多い。
「うちはそんなに財産が無いから遺言書は必要ない」という考えは危険。 財産規模を問わず、亡くなる前に遺言書を作成することが大事。
遺言書の効力:認知症になったら無効
65歳以上の4人に1人は認知症予備軍
出典:厚生労働省
厚生労働省のデータによると、65歳以上の4人に1人は認知症、または認知症予備軍とされています。
もちろん70代、80代になれば認知症になる確率はもっと高くなります。
定年退職してから10年以内に、約10人に1人が認知症になる可能性があります。
今まで自分には関係がないと思っていたとしても、退職後わずか10年で10人に1人が認知症になるという事実を知ると、決して他人事ではないということが実感できるでしょう。
認知症になると思い出すことができなくなったり、物事の判断が難しくなります。
そうなる前に遺言書を残すことで、いざ相続になったときに遺族が揉める要因を取り除くことが大切です。
認知症になってから書く遺言書は無効
認知症になってから作成した遺言書は、法律上無効となります。
法的に有効な遺言書を作成するには意思能力が必要となります。
しかし、認知症になってしまうと意思能力がないと判断されてしまうので、有効な遺言書の要件を満たさなくなってしまうのです。
具体的には、遺言の内容を理解し、遺言によってどのような結果になるかを理解する能力が必要とされます。
認知症になってこれらの能力がなくなってしまった状態で遺言書を書いたとしても、その遺言書は無効となってしまいます。
誰でも認知症になる可能性がある
認知症になるリスクの中で最も大きなモノは加齢です。
他にも遺伝子的な要因やその他の病気やケガが要因となることもありますが、いずれにしても、誰でも年をとることは避けられません。
つまり、どんな人でも認知症になるリスクを抱えているのです。
認知症になると遺言書を書くことはできなくなってしまいますが、定年退職を迎える頃から認知症になるリスクは急激に高まってきます。
これまで自分が築いてきた財産を巡って争いが起きないように、親族へどう残すか、それを解決する一つの方法が遺言書の作成です。
誰でも年齢とともに認知症になるリスクは高まりますが、現時点で認知症ではないのなら、自分の死後残される家族のために遺言書を作成することは、誰にでもできる効果が抜群の相続対策です。
遺言書作成は専門家のサポートが必須
自筆証書遺言と公正証書遺言
一般的な遺言書は「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2つに分けることができます。
自筆証書遺言とは、基本的に専門家が関与せずに自分で作成する遺言書のことです。
一般的に遺言書というと自筆証書遺言をイメージする方が多いようです。
一方で、公正証書遺言は、公証人が関与して作成される遺言書のことで、原本は公証役場に保存されるため、紛失などの恐れがありません。
どちらの遺言書も自分の死後、財産をどう分けるかを指定することができますが、公正証書遺言は公証役場で保管され、自筆証書遺言は原則としてご自身で保管することになります。
このため、自筆証書遺言には紛失や焼失・改ざん等のリスクがあるので、確実に作成した遺言書を残すなら公正証書遺言を作成することをオススメします。
遺言を確実に残すなら公正証書遺言
せっかく遺言書を作成しても、その内容が遺族へ伝わらなければ意味がありません。
自筆証書遺言の場合は、遺言書を自分で任意の場所に保管することもできるため、紛失してしまったり、改ざんされたり、見つけた人に隠蔽されてしまう恐れもあります。
また、遺言書に記載しなければならない要件を知らないために無効となってしまうことも少なくありません。
一方、公正証書遺言の原本は公証役場に保存されているため、紛失・改ざん・隠蔽の心配がありません。
万が一自宅が火事で焼けてしまっても、原本は公証役場で保存されているため、確実に遺言内容を相続人へ伝えることができます。
また、遺言書の作成も司法書士や税理士といった専門家に相談して決めた内容で公証人が作成してくれるため、記載内容に不備があって無効となってしまうことはありません。
作成した遺言書を間違いなく遺族へ届けるためにも、遺言書は公正証書遺言での作成が良いでしょう。
遺言書作成時は遺留分に注意
遺言書を作成する際に、必ずこれだけは知っておきたい注意点があります。
それは「遺留分」というもので、相続人が一定の相続財産を取得できる権利のことです。
具体的な遺留分の割合は、基本的に法定相続分の半分となりますが、故人の兄弟姉妹には遺留分はありません。
遺言書がこの遺留分を侵害していた場合には、遺留分を侵害された相続人は最低限の遺産の取り分を確保することができます。
この制度を遺留分侵害額請求(旧称:遺留分減殺請求)といいます。
たとえば相続人A(長男)にすべての財産を相続させるといった遺言があった場合、相続人B(次男)は法定相続分の半分(1/4)の遺産を取得する権利を持っており、遺留分侵害額請求をすることによって最低限の遺留分を確保することができます。
相続人間の争いのタネを取り除く目的で遺言書を作成しても、その遺言書が遺留分を侵害している遺言書だったとしたら、結局遺留分侵害額請求で後味の悪い相続になってしまう可能性があります。
税理士や司法書士、弁護士などのサポートを受けながら、遺留分にも十分気をつけた遺言書の作成をするようにしましょう。
公正証書遺言の作成にかかる費用
公正証書遺言を作成する場合は、公証役場へ手数料を支払う必要があります。
手数料は次の通りです(公証人手数料令第9条別表)。
遺言書に記載する財産額 | 手数料 |
100万円まで | 5,000円 |
200万円まで | 7,000円 |
500万円まで | 11,000円 |
1,000万円まで | 17,000円 |
3,000万円まで | 23,000円 |
5,000万円まで | 29,000円 |
1億円まで | 43,000円 |
〜 1億円を超える部分は次の金額を加算 〜 | |
1億円を超え3億円まで | 5,000万円毎に13,000円 |
3億円を超え10億円まで | 5,000万円毎に11,000円 |
10億円を超える部分 | 5,000万円毎に8,000円 |
※上記手数料は、財産を受け取る相続人ごとに計算します。
※財産総額が1億円以下の場合は、相続人の合計手数料に11,000円が加算されます。
※その他、手数料が加算される場合があります。
たとえば、配偶者に6,000万円、長女に3,000万円を相続させるとする遺言の場合の手数料は次の通りです。
- 配偶者分の手数料:43,000円
- 長女分の手数料:23,000円
- 財産総額が1億円以下なので11,000円 ∴手数料 = 77,000円(1+2+3)
また、公正証書遺言の作成には証人が必要になりますが、公証役場で証人の紹介をしてもらった場合には別途謝礼(5,000円〜15,000円程度)が必要です。
その他に戸籍等の必要書類を集めたり、専門家へ相談して遺言書を作成する場合には、そのケース毎に別途費用が掛かります。
遺言書の作成は今すぐ専門家に依頼
秋田税理士事務所グループでは、遺言書の作成サポートを行っています。
「まだ元気」と考えていても、認知症になってからでは手遅れです。
あとで依頼しようと考えていると、手遅れになってしまうかもしれません。。。
遺言書作成の依頼に関する初回相談料は無料ですので、ぜひ、お気軽にお問い合わせください。
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